シンバイオ製薬、2021年上期は赤字幅縮小、製剤の切り替え進み粗利益率は74%に

2022年から23年にかけての新たな開発品導入に意欲

2021年8月6日 07:00

野村和博

業績を説明する吉田文紀社長
業績を説明する吉田文紀社長

 シンバイオ製薬は2021年8月5日、2021年12月期の中間決算説明会を開催した。自社販売体制に切り替えた主力の抗がん薬「トレアキシン」(ベンダムスチン)の売り上げが好調で赤字が前年に比べ大幅に縮小した。また、目標に掲げていた単月の黒字化、および第2四半期としての黒字化は達成した。吉田文紀社長は「単月の黒字化が通期の黒字化を占う試金石だと考えていたが、非常にいい数字を出せた」と評価し、期初に掲げた2021年12月期の黒字化予想について「十分に達成可能」と改めて強調した。

 同社はトレアキシンの販売による早期の黒字化を掲げている。また、米Chimerix社から導入した抗マルチウイルス薬のブリンシドフォビル(SyB V-1901)と米Onconova Therapeutics社から導入した抗がん薬リゴセルチブ(SyB L-1101)の開発が、目下の事業課題だ。

 トレアキシンについては、エーザイに委託していた販売体制を2021年度から自社販売に切り替えたことで売上高の増加を見込んでおり、また従来の凍結乾燥製剤(FD製剤)よりも利便性が高く、利益率も高い液剤(RTD製剤)の販売も始まったことで、利益率の向上も期待される。

6月の売上高は前年同月比4倍以上に

 2021年度上期の業績全体としては、まずまずの着地となったようだ。上期の売上高は31.4億円(前年同期は13.6億円)、営業損失は1.9億円の赤字(同18.3億円の赤字)となり、赤字幅が大幅に圧縮された。また第2四半期だけを切り出すと、売上高17.2億円(同8億円)、営業利益は1500万円の黒字(同8.7億円の赤字)となり、四半期黒字化を達成した。6月単月の業績も、売上高7億円(前年同月は1.7億円)、営業利益は8500万円の黒字(同3.2億円の赤字)だった。

 売上高の増加は、自販による営業生産性の向上と、患者数の多いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)への適応拡大が2021年3月に承認されたことが寄与したと考えられる。また営業損益の改善は、RTD製剤の浸透が大きい。RTD製剤は粗利益率がFD製剤よりも圧倒的に高く、その浸透により利益率が大幅に高まった。FD製剤を販売していた2020年6月は粗利益率が30%だったが、RTD製剤への切り替えが進んできた2021年6月は74%にまで高まった。

 ただし、上期の売上高は同社の想定よりも3億~4億円下回った。これは第1四半期にエーザイ販売分のトレアキシン市中在庫が消化された(エーザイの売上高になった)こと、コロナ禍で治療の遅延が起きていることなどが要因だ。もっとも、治療の遅延はいずれ解消されると考えられ、吉田社長は「上期のマイナス要因は、いずれも下期のプラス要因になるだろう」と見通した。

 2021年度上期のマイルストーンとして掲げていた6つの課題は全てクリアした。(1)トレアキシンRTD製剤の発売とFD製剤からの切り替え促進、(2)ブリンシドフォビルのIND申請、(3)トレアキシンのDLBCLへの適応拡大、(4)トレアキシンの急速投与(RI)製剤の承認申請、(5)リゴセルチブの再解析と応用研究の開始、(6)単月の黒字化──だ。吉田社長は「単月の黒字化を達成したことで、今後は黒字がどれだけ積み上げられるかが勝負になる」と話した。

 通期の業績予想は売上高91.5億円、営業利益13.6億円としており、予想を据え置いた。2021年2月に発表した中期経営計画で示した、2022年度の売上高109.9億円、営業利益17.4億円、2023年度の売上高123.7億円、営業利益21.0億円も変更は無かった。

2022年~23年に新たな開発品の導入も

 研究開発の進捗に関しては、抗マルチウイルス薬のブリンシドフォビルについて、造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症(小児・成人)を対象とした開発が決定しており、2021年3月に米国で第2相臨床試験のIND申請が完了している。2021年度第3四半期に患者登録が始まる予定だとした。また、新たな適応症の選定も進んでおり、2つ目、3つ目の適応症を追加する予定だ。「新たな適応症については、2021年度通期の決算発表のタイミングで、詳細を報告できるだろう」と吉田社長は語った。

 この他、業績拡大に伴って欧米のバイオ企業からライセンス関係の打診が入るようになっており、吉田社長は「(重点領域である)血液領域以外で新たな開発品を、2022年から2023年にかけて導入できるのではないか」とパイプラインの充実に向けて意欲を見せた。